新型コロナウイルスの影響で2020年2月末から日本の経済はかなりの業種でストップしてしまっていいるということです。日本が、世界が今までに経験したことが無い不況がやってくることが予想されます。
就職難やリストラに遭遇した人も多いのではないでしょうか。
フリーランスや経営者の方も業種によっては大きな影響を受けることでしょう。
この様な時代背景となると、医療や福祉の仕事が注目されるようになります。
医療系の資格って不況に強いっていうけど、実際にどうなの?
という疑問に、4年制大学を卒業後一般企業に就職→退職→臨床工学技士となった私の経験に基づいてお答えします。
結論を言うと、医療系の資格は不況に強いといえます。
とは言っても人には向き不向きがあります。
すべての人が臨床工学技士という仕事が向いているかというと、そのようなことはありません。
そのあたりも含めて深堀して説明していきます。
就職氷河期と言われた時代と今の状況
私は2000年に4年制大学を卒業しました。この頃の日本は就職氷河期と言われた時代でした。
1993年から2005年卒が就職氷河期に該当するといわれています。
私が子供の頃は、終身雇用という物が信じられていた時代で、大人になって就職すると、定年まで会社で働くということが当たり前と考えられていた時代でした。
バブル崩壊が起こり、景気が後退する中、私は大学生活をおくりました。
4年生大学の工学部の学生でした。
物作りが好きで、世の中の役に立つ製品を開発したいという想いから、製造業の企業に就職しました。
この頃の、就職氷河期というのは、一般職の求人が少なくなり文系卒の学生が就職に苦労するという状態でした。
工学部卒の私は、製造業の就職先を見つけ、とりあえず就職することができました。
20年ほど前の世界の情勢、覚えていらっしゃいますでしょうか?
国内の製造業が、中国や東南アジアに工場を作り、安い人件費で製品を作り、国内で販売するというスタイルが多くの製造業で進んでいました。
私の就職した会社も、同様で国内の工場を縮小し、海外の工場での製造を強化するという流れをとっていました。私の配属になった部署も、生産調整のため1か月製造ラインが止まるなんてこともありました。
企業というものは良いときもあれば悪いときもあるというのは当然なのかもしれません。
将来海外工場に転勤になるかもしれないという不安や、工場勤務をしていて自分のやっている仕事に疑問と将来の不安を抱き、臨床工学技士への道を選びました。
実は、この頃は不況のどん底というわけではなかったんですよね。就職氷河期の時代が2006年ごろに終わり、それ以降景気はすこしずつ良くなっていきました。
そんな中やってきたのが2008年にリーマンショックが起こり、日本でも多くの方の生活に影響が出たことを覚えています。
当然大卒の就職率にも影響がでました。
2020年に発生した新型コロナショックはこのリーマンショック以上の打撃を経済に及ぼすものと考えられています。
外食業界や、旅行業界はもうすでに取り返しがつかないような状態になっているところもあります。
医療系の資格は不況に強いのか?
医療機関の収益は直接的には景気の影響を受けません。
医療機関の収益は診療報酬改定の影響を受けるのです。
国の財政状況やその時の政権の考え方によって左右されてるところがあるので、まったく景気と無関係ということはありませんが、直接の影響は少ないです。
病院の業務という物は、医療法や保助看法、臨床工学技士法などにより、医療資格者がいないと診療点数が加算できない仕組みになっています。
例えば、看護師さんでいうと、病棟に入院している患者さん7人にたいして1人以上の看護師で看護行う7対1入院基本料を満たすためには、病棟看護師の人数を確保する必要があります。
臨床工学技士でいうと医療機器安全管理料という診療報酬点数があり、臨床工学技士が配置されている保険医療機関において、生命維持管理装置を用い て治療を行う場合に診療報酬を加算するというものがあります。
資格をもった人が病院内にいないと、病院の収益に影響をするので、おのずと医療系資格者は重宝されます。
臨床工学技士という仕事
臨床工学技士という仕事は「医療機器のスペシャリスト」と言われます。
人工心肺や人工呼吸器、心臓ペースメーカー、血液浄化装置などを医師の指示に従い操作することが主な仕事です。
新型コロナウイルスの治療で有名になったECMO(体外式膜型人工肺)は人工心肺の一種です。このECMOを行う上で臨床工学技士は重要な役割を担います。
病院内の医療機器を効率よく運用するために、ME室と呼ばれる部屋で中央管理を行う仕事も大切な仕事です。輸液ポンプやシリンジポンプ、経管栄養簿ポンプ、人工呼吸器、などなど、各部署でそれぞれ購入していると使わない装置が出てきてしまうし、メンテナンスも十分に行われなくなってしまうことがあります。
これらをME室で中央管理することで、装置の有用性を維持することが出来ます。
勤務体制
勤務体制は、勤務先によってまちまちです。
中規模以上の病院だと、緊急透析や緊急カテーテル治療、緊急手術に備えて、当直体制や、待機番体制をとっている施設が多くあります。
人工透析を数多く実施している施設では、2交代や時差出勤の勤務体制をとっている施設もあります。
施設によっては、毎月20時間以上の残業が当たり前という施設もあります。
医療職ってやりがい、モチベーションが重視されていて、
長時間労働も平気!
と言う人も多い印象です。(私もわりとそうです)
育児中のパパ、ママは保育園のお迎え時間の関係で長時間勤務が難しい場合もあります。
2019年4月に働き方改革が施行されて以降は残業時間の削減や有給休暇の取得に対して病院組織として取り組む様になり、徐々にではありますが、長時間勤務を何とかしようという働きかけは進んでいます。
業務量は減るわけではないので、工夫するしかないです。
何より、要領よく仕事をすることが大切。
臨床工学技士の年収は
臨床工学技士の年収はおおよそ400~600万円です。
私の肌感覚ですが、同世代の大卒の友人よりも若干給料はいいようです。
生活するうえで収入はとても大切です。十分納得したうえで、勤務先を選びましょう。
給料を評価する上で大切なのは、年収で見ることです。
月収で書いてあったりすると、基本給は低めに設定されていて、手当で月収が高めに記載されている場合があります。
年収でみれば、分かりやすいですよ。
年齢のタイムリミットは?
臨床工学技士になるには、専門学校で3年、大学で4年の期間が必要です。看護師または臨床検査技師の資格や工学部大学の単位取得を条件に1年間で国家試験受験資格が得られる専攻科ありますが、基本的に学校に通う期間が必要です。
この期間は医療職としてのマインドに切り替えるために必要な期間だと私は考えますが、時間がかかります。
例えば30歳で3年制の専門学校に入学した場合、就職する年齢は33歳になります。
就職試験で施設によっては年齢制限を設けている施設もあります。私が新卒時に採用試験を受けた時は、ある市民病院で募集要項に25歳以下という年齢制限明記されていました。
実際募集要項に年齢制限が記載されていない事は多いのですが、今自分が採用する人材を選ぶ側の立場になって考えるのは、施設の年齢分布にふさわしい年齢の人材が欲しいということです。
現職のスタッフが40代と20代しかいないのなら、30代の採用も考えます。
現職のスタッフが50代、40代、30代がいて、20代がいないのならば、当然20代の人材が欲しいものです。
早い話、年齢が若い方がチャンスが多いということです。
現役学生が卒業する年齢の21~22歳と同じ感覚で新卒採用での年齢のタイムリミットは26歳かな?と私は考えます。
20代前半で、臨床工学技士を目指すかどうか迷っている場合は、早めに決断したほうが良いのです。
それでは、27歳以上・・・それこそ30代、40代の人にはチャンスはないのか?
というと、まったくそんなことはありません。
年齢が上がれば上がるほど、前職で得た経験が求められます。
これは、営業成績が良いとか、管理職として実績があるとかではなく、社会人として一般常識が求められます。
新卒学生と社会人経験者とでは、社会人のとしての一般常識、例えば
- 上司への報告の仕方
- 報告書の書き方
- 同僚との接し方
- 休暇を取るときの周りへの気配り
などなど、社会人を経験していれば、得られる常識に差があります。
臨床工学技士は採用先のニーズにさえ合えば、年齢はある程度関係なく就職することが出来ます。
臨床工学技士の有効求人倍率は約5倍で、大卒求人倍率の1.83倍に比べて高い数値です。
臨床工学技士とい資格の今後の可能性、不安要素
臨床工学技士として仕事をしていて最近は、病院内で新しい装置を購入した時に、その操作を行う人材として、任されることが多くなりました。
手術室で使う装置、例えばナビゲーションシステムと言って、CT画像から3D画像を合成してプローブの位置をナビゲーションシステムの画面上に表示する装置の操作を、私の勤務先では任されるようになりました。
ロボット手術や、AI技術の発達により臨床工学技士に期待される領域はどんどん広がっていくと考えられます。
臨床工学技士の80%以上が人工透析に関する業務に携わっています。
ほとんどの臨床工学技士が人工透析業務にかかわっているといってもよいです。
人工透析を受けている患者さんの数は毎年増え続けていました。それに伴い、人工透析の現場で実務をこなす人材として、臨床工学技士の人数が増えていった側面もあります。
この人工透析の患者さんの数が2030年ごろから減少していくという予想があります。
一方臨床工学技士は毎年約2,000人の臨床工学技士が国家試験に合格しています。
すぐにではありませんが、臨床工学技士の働く受け皿ともいえる人工透析で必要な人員は今後減少していくことが予想されます。
新しい技術の担い手としての期待と、20~30年先の長い目で見た時に人工透析業務の縮小が、先行きが見通しにくい資格ではありますが、逆にそれがまだ伸びしろがある仕事だと私は考えます。
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